マウスピース型矯正装置「インビザライン」についてまとめてみました 2018.4.6
現在、当院の多くの患者様が治療を受けているマウスピース矯正装置「インビザライン」。
よく話に聞いたり、知り合いがマウスピース矯正をしていたりして興味はあるけど、そもそもこの「マウスピース型矯正装置(インビザライン )」とはどんな装置・治療システムなのかわからない方が多いようです。
そこでマウスピース型矯正装置「インビザライン」とはどんなものなのかを一度まとめてご紹介したいと思います。
まず、「マウスピース型矯正装置(インビザライン )」とはマウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置の一つで、1997年アメリカのアライン・テクノロジー社により開発されました。
その後、1999年にアメリカで治療が開始され、ヨーロッパでは2001年より、日本では2006年から治療が開始されました。
<インビザラインの歴史>
1997年 (アメリカ) アライン・テクノロジー社 設立
1999年 (アメリカ) アライン・テクノロジー社 インビザライン販売開始
2001年 (ヨーロッパ) インビザライン販売開始
2002年 (日本) アライン・テクノロジー・ジャパン社 設立
2006年 (日本) アライン・テクノロジー・ジャパン社 インビザライン販売開始
そして、1997年にマウスピース型矯正装置(インビザライン )治療がスタートしてから現在までインビザラインシステムは様々な改良、バージョンアップを行なっています。
<マウスピース型矯正装置「インビザライン」 の進化>
2008年4月 クリンチェックソフトウェア2.5発表
主な追加機能;ステージング機能詳細確認
2010年4月 インビザラインLiteスタート・クリンチェックソフトウェア2.9発表
主な追加機能;パワーリッジの登場・最適アタッチメント登場
2011年5月 インビザラインTEENスタート・インビザラインG3発表・クリンチェック3.1発表
主な追加機能;プレシジョンカット、スマートフォース・追加パワーリッジ機能(下顎切歯にも適応)
2011年11月 インビザラインG4発表
2012年10月 インビザラインLiteにオートリファインメント導入
2013年2月 新素材スマートトラック発表・インビザラインG4plus発表
2013年7月 インビザラインi7(前歯の部分矯正を対象としたインビザライン)スタート
2014年6月 インビザラインG5発表
2015年~ クリンチェックPro発表インビザラインG6発表
そして、マウスピース型矯正装置(インビザライン )では他のマウスピース矯正装置にはない独自の技術があります。この技術により様々な不正咬合を改善することが可能になります。
これは当院が矯正専門医院としてマウスピース矯正でこのマウスピース型矯正装置「インビザライン」を選択している理由の1つでもあります。
その特徴は3つあります。
①「アライナー(スマートトラック)」
②「3D画像化技術とCAD/CAM(光造形)システム」
➂「クリンチェックソフトウェア」
①「アライナー」
従来のワイヤーを用いる矯正治療とは違い、「アライナー」と呼ばれるマウスピースを通常2週間ごとに交換しながら、連続して使用することで歯を徐々に移動させます。
(最近では7日〜10日での交換も可能になりました。)
歯の移動を1枚あたり最大0.25㎜以内に設定し、個々の歯の動きをコントロールします。
しかし、これはあくまでシミュレーション上での移動です。患者様の使用時間の不足や使用方法によりシミュレーション通りに動かなかった歯に関しては、再度治療計画を立案し、アライナーを作製しなおします。
②「3D画像化技術とCAD/CAM(光造形)システム」
歯列情報のインプットは3Dスキャナ―を用い、装置製作模型のアウトプットは3Dプリンターを用いることでこれまでにない精度の装置製作が可能となりました。
(日本ではまだ導入の少ない3Dスキャナーを本院では導入済みです。)
この3Dスキャナーにより、印象材による膨張・石膏による収縮といった形態変化を避けることができます。
③「クリンチェックソフトウェア」
マウスピース型矯正装置(インビザライン )のアライナー製作には、「クリンチェックソフトウェア」と呼ばれる独自の3D治療計画ソフトを用います。
初診から治療終了までのシミュレーションを作製することにより、治療の経過を視覚的に追うことができます。
シミュレーションにより患者様へもわかりやすく説明することができます。
しかし、効率よく歯が動かせるシミュレーションを作るスキルがないと、歯も正確には動きません。
そのため、歯の動くメカニズム・力学を習得した矯正専門医による治療を受けることが望ましいと考えています。
以上が主だったマウスピース型矯正装置「インビザライン」 独自の技術です。
従来のワイヤー矯正では難しかった臼歯部遠心移動や清掃性に優れている(装置が着脱可能)などの利点も存在します。マウスピース型矯正装置(インビザライン )単独で治せなかったとしても、数ある矯正装置の一つ選択肢として治療期間の一部分に用いるだけでも意義があるのではないかと思います。
<マウスピース型矯正装置「インビザライン」の種類>
4つのラインナップがあります。
①インビザライン・full(フル)・・・マウスピース型矯正装置(インビザライン )治療におけるスタンダードコース
②インビザライン・lite(ライト)・・・軽度の症例のみ適用可能なコース
➂インビザライン・i7(アイセブン)・・・非常に軽度な症例のみ適用可能なコース
④インビザライン・teen(ティーン)・・・中高生の患者さん向けのコース
インビザライン・full(フル)
基本的に、マウスピース型矯正装置「インビザライン」といえばこの「インビザライン・フル」のことを指します。
このインビザライン・フルは、マウスピース(アライナー)の枚数に制限がないのが特徴です。
実は、マウスピース型矯正装置(インビザライン )は治療適用範囲が限られています。
また、適用範囲の症例であっても、一度のシミュレーションにより治療が完了しないこともあります。
これには、2つの理由があります。
1つ目は、シミュレーション自体は完全であっても個々の歯の動きには個人差があり、どうしてもシミュレーションとのずれが生じることがあります。
2つ目は、マウスピース(アライナー)素材の限界です。
素材は常に研究開発が加えられ改良されており、2014年春からは最新のスマートトラックという素材を使用していますが、現状ではプラスティック素材であるという壁を越えていません。
このように、マウスピース型矯正装置(インビザライン )は形状記憶ワイヤー・ステンレスワイヤーなどを用いるマルチブラケット装置によるワイヤー矯正に勝てない側面を持ち合わせているのです。
とはいえ、その欠点を補うため、ミッドコースコレクションという治療修正を加え、治療のゴールを目指していきます。
そのため、この「インビザライン・フル」というコースを選択するのです。
インビザライン・lite(ライト)
インビザライン・liteはインビザラインのラインナップの一つで、2010年4月よりリリースされました。
これは、片顎のステージ数が14ステージ以内の治療に適用しています。つまり、非常に非常に軽度な症例のみに適用可能ということです。
日本人の歯列は欧米人と違い、軽度不正咬合の症例は多くありません。
そのため、日本の矯正歯科医院に訪れる患者様にはなかなか適用できないのが実情です。
インビザラインLite適用範囲
・軽度の不正咬合
・MTM治療
・パーシャルまたはコンビネーション症例
・矯正治療後の後戻り症例
・補綴前処置
インビザライン・i7(アイセブン)
インビザラインi7は2013年7月よりリリースされた比較的新しいラインナップです。
これは、片顎のステージ数が最大7ステージまでの治療に適用しています。
インビザライン・ライトよりもよりさら軽微な症例にのみ適用ということになります。主にわずかな矯正後戻り症例や前歯部の限定的な歯牙移動の際に適応します。
インビザライン・teen(ティーン)
インビザライン・ティーンは2011年5月にリリースされた10代(中学生・高校生)用のマウスピース型矯正装置(インビザライン )です。目立ちにくい透明なマウスピースを用いて、永久歯が生えそろう中学生・高校生(12~16歳頃)の頃に行う本格的な歯列矯正ができるようになりました。
思春期のお子様は学校でからかわれることを嫌がり、目立つ矯正装置はコンプレックスになってしまうことがありますが、マウスピース型矯正装置(インビザライン )はお友達にも気づかれにくく、取り組みやすい矯正治療です。
マウスピース(アライナー)の枚数に制限がないという点では、インビザライン・フルと変わりがありませんが、違いは、中高生特有の事情を考慮した機能が追加されている点です。それは、成人矯正にはないティーンのための特別な機能として「装着時間の確認機能-コンプライアンス・インジケータ」がある点です。
最大のメリットであるマウスピースの矯正装置を自由に外すことができることができることが自己管理能力が未熟なお子様の場合、矯正治療の失敗につながる場合があるため、インビザライン・ティーンのみに設けられた機能です。
唾液に反応して徐々に色が薄くなる「コンプライアンス・インジケータ」により、ご両親やドクターもマウスピースの装着時間を視覚的に確認することができ、患者様が積極的にマウスピースを装着する効果も期待できます。
*インビザライン・teen(ティーン)の特徴のまとめ
①萌出タブ・萌出スペースを考慮
歯の交換時期には個人差があるため、中学生・高校生であっても永久歯列が完成していないこともあります。
そのため、完全萌出していない第二または第三大臼歯の近心咬頭面に「萌出タブ」を設定することができ、歯牙の過剰萌出を防げます。また、犬歯・小臼歯が未萌出または萌出途中の場合、その歯が自然に萌出できるように「萌出スペース」を確保したマウスピース(アライナー)の作製が可能です。自然萌出に対応するスペースを確保したマウスピース(アライナー)の作製が可能です。
②コンプライアンス・インジケータを設置
マウスピース型矯正装置(インビザライン )治療の成否はアライナー装着時間により決まります。インビザライン・ティーンには唾液による使用状況チェックが可能なコンプライアンス・インジケータが設置されているので、インジケーターの色を見ることで個々の患者さんにとっての適切な装着時間が守られているかどうかがわかります。勉強に部活にと忙しく不規則な生活を送ることも多い中学生・高校生の患者さんの場合、このような指標を利用して、歯の動きの評価に役立てることも有効な方法です。(*もちろん、装着時間が極端に少なければ歯は適切に動きません!!)
③アライナーの破損・紛失への対応
中高生はどうしても、物をなくしやすい傾向があるようです。
そのため、インビザライン・ティーンにはそれに対応したシステムが組み込まれています。
具体的には治療期間中、6個(片顎6個または両顎3セット)の交換アライナーが含まれてます。
<マウスピース型矯正装置「インビザライン」のメリット>
透明で目立ちにくい
透明なマウスピースのため、目立つこともなく、周囲に気付かれずに歯列矯正を行うことができます。薄く滑らかな装置なので、違和感も少なく、話しづらさもほとんどありません。
痛みが少ない
過度な力がかからないため従来型の矯正装置に比べ、比較的痛みが少ないと言われています。またワイヤーやブラケットを使用していない為、粘膜に当たる痛みや刺さる痛みは無く、口内炎ができることはほとんどありません。
取り外しができて衛生的
取り外し可能な為、歯ブラシも今まで通り行えます。従来型の矯正装置のように装置にプラークが沈着することがなく、歯や歯周組織を健康に保つことができます。またマウスピースは歯ブラシで簡単に洗浄することができ、とても衛生的です。
食べたいものが食べられる
従来型の矯正装置ですと、ほうれん草のような葉物は絡みやすく、また餅のような粘着性のあるものはくっつきやすい為、少なからずわずらわしさがあるかと思います。マウスピース型矯正装置(インビザライン )の場合は取り外しが可能ですので、普段と変わらず食事を楽しむことができます。
金属アレルギーの方でも安心
素材がプラスチック製の為、金属アレルギーを引き起こす心配がありません。金属アレルギーで矯正治療を断念した方も、安心して治療を受けて頂くことができます。
通院回数が少ない
1〜2週間ごと(症例によって異なります)のマウスピースの交換はご自分で行います。定期的なチェックに必要な通院は1.5〜3ケ月ごとです。このため忙しい方や遠方の方も負担が少なくてすみます。
<薬事認証について>
マウスピース型矯正装置(インビザライン )は、アメリカのアラインテクノロジー社より提供されているカスタムメイドのマウスピース矯正装置です。これまでマウスピース型矯正装置(インビザライン )は、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、太平洋地域など80か国以上で行われている矯正治療です。
世界中では500万人以上の方がマウスピース型矯正装置(インビザライン )治療によって矯正治療を行っています。(2018年1月現在)
インビザラインシステムは、FDA(アメリカ食品医薬品局)の医療機器として認証を受けているマウスピース装置で、ISOを取得している最新の工場で製造されています。
日本において、マウスピース型矯正装置(インビザライン )を含む国内外のすべてのカスタムメイドのマウスピース型矯正歯科装置は、それぞれの患者様ごとに作成している装置で、市場流通性がないことから、薬事法上の医療機器にも、歯科技工法上の矯正装置にも該当せず、医薬品副作用被害救済制度が適用されない場合があります。
マウスピース型矯正歯科装置(インビザライン)のマウスピース材料自体は日本の薬事認証を得ており、アレルギー等に関する安全性は確保されています。
いかがでしたでしょうか?
このようにマウスピース型矯正装置(インビザライン )によるマウスピース矯正は現在まで様々な進化を遂げています。これらの進化はまだまだこれからも続いていくと思われます。
みなさんにとってより良い矯正治療を提供できるように私たちも努力していきたいと思います。